Hana’s Note

はじめに

AIを使った自動化を調べていると、Agentという言葉が目に入ります。目的を伝えれば、AIが次の手順を考え、ツールを使い、結果を見ながら作業を進める仕組みです。けれども、すべての仕事に最も自律的な構成が必要とは限りません。

この記事では、あらかじめ決めた流れで進めるWorkflowと、状況に応じて次の行動を選ぶAgentを、優劣ではなく設計の選択肢として整理します。

AIで自動化する仕事は、同じ形ではない

「AIで仕事を自動化する」と聞くと、一つの大きな仕組みがすべてを処理するように想像しがちです。実際には、仕事の性質によって必要な仕組みは変わります。

たとえば、毎朝同じ項目を集めて定型レポートにする仕事なら、入力、集計、文章化、保存の順番を先に決められます。資料を決まった列へ変換する作業も、入力と出力の形式を定めやすい仕事です。

一方で、「このテーマについて調べ、足りない情報があれば別の資料を探して」と頼む場合は、最初から必要な手順をすべて書くのが難しくなります。調査の途中で、検索先や次に確認する条件が変わるからです。

見るべきなのは、どちらがAI向きかという順位ではありません。手順を予測できる仕事か、状況を見て次の行動を変える必要がある仕事かを見分けます。

Workflowとは何か

Confirmed|設計解説から確認できること

Anthropicは、大規模言語モデル(LLM)とツールをあらかじめ決めたコード経路で組み合わせるものをWorkflow、LLMが処理やツール利用を動的に決めるものをAgentとして区別しています。これは同社の設計上の整理であり、業界全体に一つの定義が確定しているという意味ではありません。

Workflowは、処理の道筋を先に設計する構成です。たとえば、次のような流れです。

入力を受け取る

内容を分類する

決めた処理を実行する

形式を確認して保存する

途中でLLMを使って分類や文章化を行う場合もあります。条件による分岐や、複数の処理を並列に実行する設計もWorkflowに含められます。したがって、Workflowを「AIを使わない単純なプログラム」と限定するのは正確ではありません。

Article interpretation|Workflowの向きやすい条件

Workflowは、手順、入力、出力の形式を比較的予測できる仕事に向きます。経路を先に決められるため、どの段階でモデルを呼び出すか、どこに権限が必要か、どの結果を保存するかを確認しやすくなります。

再現しやすい流れを設計できても、結果が正しいと保証されるわけではありません。途中のモデル出力、入力データ、外部サービスの状態は確認が必要です。

Agentとは何か

Confirmed|Agentに含まれる要素

OpenAIの実務ガイドは、Agentの基本要素としてモデル、ツール、指示を挙げています。モデルが状況を読み、外部のデータや機能へ接続するツールを選び、指示とガードレール(AIの行動を制限するルール)の範囲で処理を進めるという考え方です。

Agentは、決められた目的に向けて、次の処理やツール利用を状況に応じて選ぶ構成です。検索結果を見て別の検索を行う、ファイルを変更したあとテスト結果を確認する、といった複数段階の作業が候補になります。

Agentは、何でも自由に実行する存在ではありません。どのツールを使えるか、どのデータへ触れられるか、いつ停止するか、どの段階で人間へ戻すかを設計したシステムです。

Agent化すると、設計するものが増える

Agentを使う場合は、少なくとも次の項目を決める必要があります。

  • 権限:読み取りだけか、ファイル変更や外部送信まで許可するか
  • 停止条件:最大反復回数、時間制限、予算、エラー時の停止方法
  • 人間確認:送信、購入、公開、削除などの前に承認を求めるか
  • ログ:どの指示で、どのツールを使い、何が返ったかを追跡できるか
  • 失敗時対応:再試行するか、別の手順へ戻るか、人間へ引き継ぐか

MCP(AIアプリケーションと外部ツールをつなぐための仕様)の認可仕様でも、アクセス権を設計することが前提になっています。ツールが使えることは便利さだけでなく、外部へ影響を及ぼす可能性も意味します。

WorkflowとAgentは、連続した設計として考える

Source-derived observation|段階的なパターン

Anthropicの解説では、単純な処理を組み合わせるパターンから、モデルがサブタスクを分け、次の行動を動的に決めるAgentまで、複数の構成が紹介されています。記事ではこれを複雑さの順位ではなく、選択肢が増えていく設計の連続として扱います。

予測しやすい仕事から状況に応じた判断が必要な仕事まで、固定処理、分岐・複数処理、組み合わせ、Agentを連続した設計の選択肢として示す図
図の読み方:右へ進むほど優れているのではなく、仕事に必要な柔軟性と判断の幅が変わります。

たとえば、最初は一つのLLM呼び出しで足りる仕事でも、出力の確認を加えたり、入力の種類ごとに処理を分けたりできます。Agentへ移る前に、固定できる部分をWorkflowとして残す設計も可能です。

この連続性を意識すると、「WorkflowかAgentか」という二択ではなく、「どの段階まで柔軟性が必要か」という問いに置き換えられます。

どちらを選ぶか

以下は、設計を考えるときの目安です。一律の判定表ではなく、確認すべき条件を並べたものです。

視点Workflowを先に検討しやすい条件Agentを検討する条件
手順順番を事前に決められる状況に応じて順番が変わる
入力形式や種類がそろっている曖昧で、途中の理解が必要
出力固定の列・形式・保存先が必要調査結果に応じて内容が変わる
例外主要な例外を先に列挙できる例外の種類を事前にすべて予測しにくい
コスト呼び出し回数や処理時間を見積もりたい柔軟性に追加コストを払う価値がある
確認確認点を固定できる状況ごとに判断や承認が必要

どちらを選んでも、人間の確認点は設計に残ります。必要な柔軟性と、許容できる運用負荷を同時に考えます。

具体例で考える

Workflow向きの概念例:定型レポート

毎日の売上データを読み、決められた項目を集計し、同じ形式のレポートへ保存する仕事を考えます。入力、集計の手順、出力の項目が決まっているなら、取得、変換、検算、保存をWorkflowとして固定できます。

文章の要約や異常値の説明にLLMを使うことはできますが、保存先や列順まで毎回モデルに決めさせる必要はありません。固定できる部分をプログラムや決まった処理へ分け、内容の解釈だけをモデルに任せる設計です。

Workflow向きの概念例:データ変換

複数の入力を同じ列順へ変換し、ファイル名をそろえて保存する仕事も、Workflowを先に検討しやすい例です。入力の違いを分類する段階だけLLMを使い、変換と保存は固定することもできます。

Agentを検討する概念例:状況で調査先が変わる調査

「あるテーマについて、信頼できる資料を探して要点をまとめる」という依頼では、最初から必要な検索語や資料数を決められないことがあります。検索結果を読んで不足を見つけ、別の資料を探し、矛盾を確認する必要があるなら、Agentの柔軟性を検討できます。

Agentに任せれば調査が正しくなるわけではありません。使用できる情報源、検索回数、出典の確認、停止条件を決め、最終的な主張は人が一次資料へ戻って確認します。

Agentを検討する概念例:複数ツールを使う作業

ファイルを読み、必要な計算を行い、結果に応じて別のデータを参照するような作業では、利用するツールが入力によって変わる場合があります。Agentにツール選択を任せる余地がありますが、書き込みや外部送信の権限は分け、重要な操作には人間確認を置きます。

Agent化で増えるもの

Agentの柔軟性には、運用上の負担が伴います。

  • トークン/APIコスト:複数の判断やツール呼び出しが重なると、入力・出力の量や呼び出し回数が増える場合がある
  • 遅延:処理が複数段階になるほど、完了までの時間が伸びる場合がある
  • 誤りの累積:途中の誤った判断やツール結果が、後の手順へ引き継がれる可能性がある
  • 権限リスク:読み取りだけでなく、変更・送信・削除などの権限を持たせると影響範囲が広がる
  • 状態管理:どこまで進んだか、何を試したか、どの結果を採用したかを保持する必要がある
  • 人間確認の設計:すべてを止めるのか、危険な操作だけ止めるのかを決める必要がある

これらの影響は、構成、モデル、入力、ツール、再試行条件によって変わります。削減率や成功率を一つの数字で示せるものではありません。

限界と注意点

  • Agentという名前だけでは能力は決まらない。 同じ名前でも、ツール、権限、停止条件、モデルの違いで動作は変わる。
  • 自律性は権限設計に依存する。 自分で次の手順を選べても、許可された範囲が狭ければ実行できることも限られる。
  • 柔軟性と安全性は両立の設計が必要。 自由度を増やすほど、監督、ログ、テスト、失敗時の復旧が重要になる。
  • 概念と製品仕様は別である。 Anthropicの2024年の設計解説は設計パターンの参考であり、現在の各製品の性能・価格・提供条件を保証するものではない。
  • 人間の確認はなくならない。 重要な外部操作、機密情報、公開や契約に関わる処理では、適切な承認と検証が必要になる。

Summary

AI活用では、最初から最も自律的なAgentを選ぶ必要はありません。手順が決まっている部分はWorkflowとして固定し、分岐や複数処理を加え、それでも事前に経路を決めにくい部分だけAgentの柔軟性を検討します。

重要なのは、Agentという名前や複雑さではなく、仕事に必要な柔軟性と、許容できるコスト・遅延・権限・確認の範囲を合わせることです。

Taka’s View

Hana & Taka

夜の窓辺の丸テーブルで、黒白猫のHanaとTakaがコーヒーをそばに静かに話している

Hana賢そうなものを選ぶんじゃなくて、仕事に合わせるんだね。

Taka固定できる部分は固定して、必要な部分だけ柔軟にする。それがAIを安全に使う設計になると思う。